『映画美学校セレクション2008』
映画美学校セレクション 2008

7月12日(金)〜7月18日(土)連日9:00PM〜  ユーロスペースにて



映画美学校では毎年、フィクション・コース、ドキュメンタリー・コースの授業(実習)、スカラシップ、「映画美学校映画祭」などを通じて、数多くの映画が制作されています。そうした多数の映画の中から厳選された作品をご覧いただく機会、それが映画美学校セレクションです。今回は、昨年度制作された作品を中心に、フィクション・コース初等科から2作品、フィクション・コース高等科から3作品、ドキュメンタリー・コース高等科から1作品、スカラシップから1作品、コラボレーション実習から1作品の8本の上映となります。常に「新しい映画」とは何かを模索し続ける場=映画美学校から生まれた新しい映画をどうぞご覧ください。


□上映プログラム  連日9:00PM〜


● 7月12日(土)/13日(日)
『そこへ行く』 福井早野香監督(2007/16mm→DV/16分)
『ハートに火をつけて』 朝倉加葉子監督(2007/DV/30分)
『sad girl』 中矢名男人監督(2007/DV/47分)
★両日とも上映前に舞台挨拶を予定しております。


● 7月14日(月)/15日(火)
『キミマニア』 原貴子監督(2007/16mm→DV/18分)
『目のまえ』 川村清人監督(2007/ビデオ/72分)
★両日とも上映前に舞台挨拶を予定しております。


● 7月16日(水)
『籠の中の緑』 丸谷肇監督(2006/DV/107分)
★上映前に舞台挨拶を予定しております。


● 7月17日(木)
『TOCHKA』 松村浩行監督(2007/DV/93分)
★上映前に舞台挨拶を予定しております。


● 7月18日(金)
『先生、夢まちがえた』 古澤健監督(2007/Hi−8→DV/40分)
※参考上映 □『古澤健のMっぽいの、好き。』古澤健監督(2008/DV/20分)
★上映前に舞台挨拶を予定しております。


会場 ユーロスペース EURO SPACE
渋谷文化村交差点左折
TEL 03-3461-0211
http://www.eurospace.co.jp
前売700円(劇場窓口で販売中)/当日900円
舞台挨拶の予定等につきましては映画美学校までお問合せください。

お問合せ:映画美学校 TEL 03-5205-3565



【作品紹介】  解説:筒井武文(映画作家/映画美学校講師)


『そこへ行く』
2007年/16mm→DV/16分
【第10期フィクション・コース初等科修了作品】

●監督・脚本:福井早野香

キャスト:柳有美/小嶋洋平/荒金蔵人/大庭かおり
スタッフ:麻生忠/海田晃弘/金子一石/塚田理/山崎悠太/須永恵介/井樋口侑里/高橋航

○あらすじ
千春の姉は、橋から身を投げて自殺した。千春は姉の夫・片瀬を訪ね、姉が書いていた日記を手渡す。「あなたが読めば、姉が死んだ理由が分かるかもしれない」と、片瀬に日記を読ませようとするが、片瀬は読むことが出来ない。苦悩する2人は日記に導かれるように橋へと向かう。その途中、姉の愛人・北村と出会うが……。

○解説
まるで復讐のように姉の残した日記が、残された妹と夫と、そして愛人を悩ます。どうしても日記を読めない夫は、妻が投身自殺を計った山奥の吊り橋に向かう。『そこへ行く』は、回想を排除することで、妻の分身のような日記を際立たせ、表紙の赤が森の中で、生々しく息づく。ひょっとすると、これは人間ドラマではないのかもしれない。とにかくショットが編集を拒否するように強いのである。


『ハートに火をつけて』
2007年/DV/30分
【第8期フィクション・コース高等科修了作品】

●監督・脚本:朝倉加葉子

キャスト:渋谷拓生/岸勇亮/小松美月/内木英二

スタッフ:畑有紗/四方隆夫/新藤直人/川村清人/高島良太/豊嶋晃子/山下知恵/永志純子/
奥田純/松浦博直

○あらすじ
山間の静かな村に左遷になった刑事。そこは何の事件もない平和な田舎ではあったが、実は頻発する火災を隠蔽していたことが判明する。村長は即座に事態の改善を約束し、問題は解決したように見えた。が、刑事は少し気になる兄妹と知り合う。兄妹をとりまく村長や村人の妙な雰囲気に、刑事は気づかないうちに飲み込まれていく。

○解説
タイトルはトレンディ・ドラマを思わせるが、内容との落差こそショッキングだ。これは、堤幸彦の『トリック』なのか、リンチの『ツイン・ピークス』なのか。とにかく怪しい村人たちの描写が可笑しいが、刑事がこの異空間に取り込まれていく様は不気味でもある。土管の中に入った少女の起こす超常現象で、世界は崩れ逝く。作者が確信犯か、天然か判らないことに、観客は翻弄される。


『sad girl』
2007年/DV/47分
【第8期フィクション・コース高等科修了作品】

●監督・脚本:中矢名男人

キャスト:新井理沙/久保木くれを/榊原仁/澤木柚季江

スタッフ:飯田佳秀/浦口 醇二/粕谷美枝/川村清人/小嶋健作/高島良太/豊嶋晃子/西口浩一郎/本間幸子/森内健介

○あらすじ  中学生・あかねの前に、両親の離婚のために幼い頃に生き別れた兄・修一が現われる。父親と住んでいる家に火を放ち、義理の母親や弟妹たちを殺してきたという修一に興味を持ったあかねは、逃避行に付き合うことにする。それは二人の記憶を辿る旅となっていく。

○解説  三人の女子学生の後ろ姿を前進移動で捉えたショットから、くるくる回る赤い傘まで、冒頭のシーンひとつで、この作家の力量が窺われる。練炭の不気味さも特筆に価し、二組のカップルの死への逃避行が、ひとりの道化としての教師を配して描かれる。狙いであろう非リアルな演出が、観客の期待を宙に吊りつつ、死んでいるか生きているかの境を彷徨わせるのである。


『キミマニア』
2007年/16mm→DV/18分
【第10期フィクション・コース初等科修了作品】

●監督・脚本:原貴子

キャスト:吉武律子/海田晃弘/佐々木麻衣/井川耕一郎/西山洋市

スタッフ:橋爪慧/高橋秀弘/猪野龍壱/占野正樹/小川野枝実/橋浦太一/倉光哲司/村本哲人/
岡本雄介/高橋悠平

○あらすじ
同じ大学に通う山野を運命の相手と強く信じている妙子は、山野と知り合いになるために、わざと自転車でひいて病院送りにする。そして、「おわびに身の回りの世話をする」という名目で部屋の鍵を受け取ると、勝手に家にあがりこんでしまう。山野の日常にどんどんわりこんでいく妙子は、ある日山野を世界旅行に誘うのだが・・・。

○解説
これはまた生と死の間に拘り抜いた作品だ。君のマニアであると言うヒロイン造形の奇抜さに驚きつつ、どこかで共感を覚えさせるのは、作者の術中に嵌ったのだろうか。ショットが弱いという欠点は抱えつつも、恩師を演じる井川耕一郎の怪演振りには圧倒される。ここを起点に、霊界に見えない霊界をカップルは彷徨うことになるのだが、この即物性は魅力的である。


『目のまえ』
2007年/ビデオ/72分
【第8期フィクション・コース高等科助成作品】

●監督・脚本:川村清人

キャスト:石川真大/平沢里菜子/遠藤留奈

スタッフ:秋山恵二郎/小原悠人/甲斐靖人/粕谷美枝/齋藤涼平/新藤直人/高島良太/豊嶋晃子/永志純子/本間幸子/松浦博直/山下知恵

○あらすじ
高校の卒業式の日、宮本は同級生の澤田遥が男に襲われているのを目撃し、その男を殺してしまう。それを見ていた、宮本の恋人雪子。事件が忘れられない宮本は、遥に会いに東京まで行くが相手にされない。途方に暮れる宮本の前に雪子が現れ一緒に暮らすようになるのだが、ある日雪子が事件を見ていたこと告白することで、関係は揺るぎはじめる。

○解説
山間部の故郷から都会への距離、それはムルナウの『サンライズ』以来の映画的なモチーフであることに、川村清人は自覚的である。地方の男にとって、それは東京に出たふたりの女との距離である。男の上京は、面識のない二人の女を結びつけてしまう。画家志望の女は、婚約者のいる女をヌード・モデルに頼むが、ここで裸になれない女の苦悩が主題に浮上する様が感動的だ。


『籠の中の緑』
2006年/DV/107分
【第5期ドキュメンタリー・コース高等科修了作品】

●監督:丸谷肇

○あらすじ
巨大な公園という籠の中にすっぽりと入れられた緑。一見牧歌的に見えるこの周縁を、カメラ片手に、鳥を観察するかの如く定点観測していくと、やがて、犬や鳥の縄張り同様、様々な“領域”を巡る人間模様が次第に見え隠れしてくるようになり、微妙な均衡を保ちながらもかろうじて成立している生態系の構造のようなものが浮び上がってくるのだった

○解説
観察映画のような『籠の中の緑』は、光が丘公園という緑の楽園を繊細に描き出す。一見、ワイズマンの方法論を受け継いでいるようだが、まったく異なるのは、その時間が流れているのか、止まっているのか判らない循環性である。モチーフが回帰する度に、感知される微妙な差異を刻み付けるキャメラの触覚性が素晴らしい。そして、ここでの言葉の配置もまた見事である。


『TOCHKA』
2007年/DV/93分
【2002年度映画美学校映画祭スカラシップ作品】

●監督・脚本:松村浩行

キャスト:藤田陽子(女)/菅田俊(男)

スタッフ
撮影:居原田眞美/録音:黄永昌/装置:相馬豊/装飾:浦井崇/衣装:居原田眞美/
編集:黄永昌/助監督:大城宏之、石住武史、本間幸子/制作:柴野淳、河合里佳

○あらすじ
海沿いの草叢に身を屈めている男。その前方には、戦中から潮風に曝されたままのトーチカのみ。生まれ故郷のこの土地に、男は数十年ぶりに戻って来た。その光景を偶然目にしていた女。戦争遺跡の写真を撮っているというその女の出現が、男を深く揺り動かす。「あなただとは思わなかったんです」そう言い残して去った男を、女は追った。

○解説
映画美学校が生んだ最大の逸材というべき松村浩行の渾身の傑作。根室の水平線の拡がりを不気味に断ち切るトーチカ。この原野を舞台に、ほぼふたりの劇として描き切った監督以下スタッフの力量に震撼させられる。その力は、ロングでの犬の走りひとつで察知できるのだが、ここでの藤田陽子と菅田俊のやりとりの描写の凄さは、かつての吉田喜重作品しか比較できないほどのものである。


『先生、夢まちがえた』
2007/Hi−8→DV/40分
【第9期フィクション・コース高等科コラボレーション作品】

●監督:古澤健

脚本:大畑創/名倉愛/竹内洋介

キャスト:加藤靖久/濱田岳/東美伽/糟谷健二

スタッフ
撮影監督:山田達也/録音:臼井勝、梶田豊土、春日和加子、間野勇人/美術:浅野陽士、大畑創、竹内洋介、吉川慎太郎/
音楽:貝塚治樹、田村雅子/助監督:瀬川浩志/演出助手:井野大地、竹内洋介、真下雅敏/スクリプター:澤田泰/
ヘア・メイク:成田真奈美/撮影助手:名倉愛、朴潤/照明助手:竹内郁、三島裕二/
制作:玉川直人、石毛麻梨子、成清翔太

○あらすじ
学習塾の講師として日々まじめに働く健一。ある日彼は、幼い時に生き別れた弟、康司に出会う。康司は近所の河原に小屋を建て自由気ままに暮らしていた。康司と再会した健一は、康司の存在に動揺を見せ始める。平凡な日々への疑問。甦る過去の記憶。やがて二人の運命は思わぬ方向へと転がりはじめるのだった。

○解説
教育者であることと夫であることのバランスが、浮浪者としての弟の出現で崩れ去る主人公の過程を冷徹に見つめる。それは自己の内側に潜む暴力性の発見というニコラス・レイの主題でもある。この学生とのコラボ作品にあたって、古澤健はその主題を製作過程に重ね合わせる。もっともらしさを排除し、混乱を混乱のまま引き受けることで、この混乱こそが映画だという確信を受講生に伝えようとしている。


★参考上映『古澤健のMっぽいの、好き。』
2008年/DV/20分 ●監督:古澤健


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