アクターズ・コース講師紹介
主任講師
平田オリザ(劇作家・演出家・青年団主宰)
劇作家・演出家、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授、内閣官房参与、劇団「青年団」主宰、こまばアゴラ劇場芸術監督。95年、『東京ノート』で岸田國士戯曲賞受賞。03年、『その河をこえて、五月』で朝日舞台芸術賞グランプリ受賞。フランスを中心に世界各国で作品が上演・出版されている。その演劇ワークショップの方法論は中学国語教科書にも採用された。大阪大学では世界初のロボット演劇にも取り組んでいる。
塩田明彦(映画監督)
映画監督。立教大学在学中より黒沢清、万田邦敏らと共に自主映画を製作する。96年、『露出狂の女』で商業映画監督としてデビューする。代表作に『月光の囁き』『害虫』『黄泉がえり』『カナリア』など。『害虫』はヴェネチア映画祭出品後、ナント三大陸映画祭で審査員特別賞、主演女優賞(宮﨑あおい)を受賞。『黄泉がえり』はS・スピルバーグによるハリウッドでのリメイクが進行している。
俳優講師
兵藤公美(俳優/青年団所属)
横浜市出身。桐朋学園大学芸術科演劇専攻、専攻科卒。洗足学園音楽大学講師。96年、平田オリザ主宰劇団青年団入団、現在在籍。青年団に出演の他、多数の劇団に客演参加し、近年は映像作品の他、自身でも公演の企画制作をてがけ意欲的に活動中。映画出演作として『仰げば尊し』『このすばらしきせかい』『東京人間喜劇』『歓待』などがある。
メッセージ「俳優が魅力的にみえる瞬間とはどういう姿なのでしょうか」:目に見える特徴を表現すること、別人に見えるよう工夫することでしょうか? 俳優はどのように考えて、演技をすればいいのでしょうか。演劇の仕組みを日常生活に当てはめながら俳優の作業を探っていきましょう。
古舘寛治(俳優/青年団・サンプル所属)
青年団とサンプルの二つの劇団に所属。青年団では『冒険王』『ソウル市民・昭和望郷編』他に出演。サンプルは『家族の肖像』『自慢の息子』他全てに出演。映画出演は『このすばらしきせかい』『松ヶ根乱射事件』『南極料理人』『クヒオ大佐』『歓待』『マイ・バック・ページ』『ミツコ感覚』『キツツキと雨』他。ニューヨークにあるHB STUDIOでウタ・ハーゲン、キャロル・ローゼンフェルドらに学ぶ。
メッセージ「有機的に演じるにはどうすればいいか? というクラスです」:「演じる」ということを始めたばかりの俳優は「いい表現、演技」を求めるばかりに自分のことで頭がいっぱいになりがちです。しかし普段の我々は有機的に周りの人、物などの環境と関わり、翻弄さえされています。そこにリアルがあると思うのです。有機的に演じるにはどうすればいいか? というクラスです。
近藤強(俳優/青年団所属)
94年に渡米。アイオワ大学で演劇、ネイバーフッドプレイハウス(ニューヨーク)でマイズナーテクニックを学ぶ。卒業後はニューヨークを拠点に舞台、自主制作映画、コマーシャルに出演。米国映画俳優組合(SAG)。07年に帰国し、劇団青年団に入団。現在まで『革命日記』『冒険王』などに出演。また、『踊る大走査線3』『歓待』『坂の上の雲』など映画・テレビ作品にも出演している。
メッセージ「俳優と身体、その場、その瞬間にいるとは?などを考えていきます」:前半は簡単なゲームを通して頭と身体をほぐし、メソッド演技法のひとつであるマイズナーテクニックの基礎訓練と近年アメリカで新しい俳優訓練法として注目されている VIEWPOINTS(ビューポイント)などを組み合わせて、俳優と身体、俳優としてその場/その瞬間にいること、あるいは選択することについて考えていきます。まず身体を徹底的に動かして身体と空間の可能性を探り、 後半は台詞を使ってのシーンワークを予定しています。
山内健司(俳優/青年団所属)
84年、ICU在学中に劇団青年団に参加、演劇をはじめる。平田オリザ「現代口語演劇」作品のほとんどに出演、代表作『東京ノート』はこれまでに15カ国22都市で上演された。劇場での演劇と劇場外での演劇に同等の価値を見出し多様な俳優活動を継続中。ワークショップなども積極的に行なっている。映画出演作は『歓待』など。平成22年度文化庁文化交流使。
メッセージ「台詞との取り組みを考えます」:台詞は書かれたしゃべり言葉。しゃべり言葉ってなんでしょうか。私たちはどんな言葉を、どんな風にしゃべっているのでしょう。機械がしゃべるのと人間がしゃべるのの違いはなんだろう。人間っぽいってなんだろうとか、そういうことを考えます。人がしゃべっている様子が愛おしくなって、俳優っていい仕事だなあと思ってもらいたいと願っています。
演出家講師
松井周(劇作家・演出家・俳優・サンプル主宰)
96年、俳優として劇団青年団に入団。俳優活動と共に劇作・演出家としても活動を始め、日本劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作に二度選ばれる。07年、劇団サンプルを立ち上げ、10年、『自慢の息子』が第55回岸田國士戯曲賞を受賞。ニューヨークタイムズにて「日本における最も重要な演出家の一人」と評され、戯曲『カロリーの消費』はフランス語に翻訳されるなど海外でも注目が集まる。また、劇団外の仕事として、さいたまゴールド・シアター(演出:蜷川幸雄)に戯曲『聖地』を書き下ろすほか、文芸誌に小説やエッセイを寄稿するなど活動の場をひろげている。10年より東京藝術大学非常勤講師を勤める。
メッセージ「ある空間や自分たちの身体を使って「物語」を探してみます」:普段何気なく口にする「物語」って一体何のことでしょうか? ある空間や自分たちの身体を使って「物語」を探してみるワークショップです。「物語」を見つけたら、そこにはきっと独自の時間が流れることでしょう。動きながら喋りながら「物語」を見つけたいと思います。台本を作るわけではありません。自分たちの「居場所=世界」を示す地図を手に入れるための試みです。「修了公演」は、一年間、演技について学んできたことの集大成ということになるでしょう。何がわかって何がわからなかったでしょうか? いっそのこと、どんどんわからなくなって煮詰まることが必要な気もします。そのための時間が用意されているということは何て贅沢なことだと思えるような成果を期待します。
柴幸男(劇作家・演出家・ままごと主宰)
ループする一人芝居『反復かつ連続』、全編歩き続ける芝居『あゆみ』、ラップによるミュージカル『わが星』など、新たな視点から普遍的な世界を描く。2010年『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞、11年に全国6都市にて上演。あいちトリエンナーレ、岐阜県可児市での市民劇、福島県いわき総合高校での演出、北九州での滞在制作など、全国各地にて精力的に活動している。
メッセージ「演技とはセリフにあるのではなく、セリフとセリフの狭間にあるんじゃないか」:演技とは何か。正直、僕にはわからない。稽古場で、本番の舞台上で、最高の演技(僕にとって)が生まれる瞬間はある。生み出した経験もある。可能性を高める、理論めいたものもある。でも、演技のすべてを、理解しているとは、とてもじゃないけど、言えない。だから、演技を教えることは僕にはできないと思う。でも考えることはできる。僕の今までの経験と仮説をもとに、一緒に考えることはできる。今、僕は、演技とはセリフにあるのではなく、セリフとセリフの狭間にあるんじゃないかと、考えている。演技について、ともに考え、実践していきたい。
※他1名の劇作家・演出家の方に講師をお願いしています(スケジュール調整中)
映画監督講師
古澤健(映画監督・脚本家)
高校生の頃より8ミリ映画を撮り始める。『home sweet movie』が97年度PFFにて入選(脚本賞)。98年、『怯える』がクレルモンフェラン短編映画祭に招待される。『超極道』で脚本家としてプロデビュー。脚本作品として『ドッペルゲンガー』『こっくりさん 日本版』など。監督作品としては、『ロスト☆マイウェイ』『making of LOVE』、最新作『ANOTHERアナザー』が公開待機中。2012年2月現在、次回作『今日、恋をはじめます』を撮影中。
メッセージ「自分の肉体をどのように駆使することでスクリーンの向こうに座る観客を魅了することができるのでしょうか?」:キャメラのレンズを通すことで、日常的に感じている生身の人間の魅力は半減してしまいます。では、生身の人間である俳優は、自分の肉体をどのように駆使することでスクリーンの向こうに座る観客を魅了することができるのでしょうか? 非人間的なレンズの力を実感することから始めて、機械を相手に演技をするための身体技法(身体の解放)を探ることが私の実習の目標となります。
鈴木卓爾(映画監督・俳優)
高校時代から8ミリ映画を作り始め、矢口史靖監督『裸足のピクニック』に脚本と助監督として参加後、商業映画の道へ。その後、NHKドラマ『中学生日記』等の脚本、『トキワ荘の青春』、『CUT』等の映画に俳優として参加。監督作品として『私は猫ストーカー』『ゲゲゲの女房』がある
メッセージ「俳優やってると映画の摩訶不思議がどんどん見えて来ます」: 映画は、監督やスタッフが俳優を見ますが、俳優からもまた監督やスタッフがよく見えます。カメラのレンズは一方向にしかついていないですが、映画の現場では、そのトンネルをいろいろのものが行き交います。俳優やってると映画の摩訶不思議がどんどん見えて来ます。映画の見えてくるトンネル、それが映画美学校アクターズコースです。入って見てください。
深田晃司(映画監督)
2002年より長短編3本の自主映画制作後、06年、『ざくろ屋敷』を発表、パリKINOTAYO映画祭にて新人賞受賞。09年、長編『東京人間喜劇』を発表。同作はローマ国際映画祭、パリシネマ国際映画祭に選出、シネドライヴ2010大賞受賞。最新作『歓待』で東京国際映画祭「ある視点」部門作品賞、プチョン国際映画祭最優秀アジア映画賞、TAMA映画祭最優秀新人監督賞を受賞。05年より劇団青年団演出部に所属しながら、映画制作を継続。11年にこまばアゴラ劇場で初の映画祭を青年団俳優とともに企画開催した。
メッセージ「やっかいな関係性をカメラ片手に体感してもらいたいと思います」:講師陣の探究心から発足したこのアクターズ・コースが、願わくば「映画的演技」と「演劇的演技」という思考のしがらみそのものを打破せんことを期待しています。しかしでは、「映画」と「演劇」は同じものでしょうか? 演劇と違い映画は常に「カメラ」という名の暴君と付き合わなくてはなりません。レンズの前で、数多の自然現象と等価の「被写体」になること。そのやっかいな関係性をカメラ片手に体感してもらいたいと思います。
万田邦敏(映画監督)
1985年の黒沢清監督『ドレミファ娘の血は騒ぐ』に共同脚本、助監督として参加。96年には押井守総合監修による実写SF『宇宙貨物船レムナント6』で監督デビューし、その演出が高く評価される。2001年には『UNloved』でカンヌ映画祭エキュメニック新人賞とレール・ドール賞をダブル受賞。04年の『あのトンネル』はカンヌ映画祭の監督週間に招待された。赤井英和主演の『ありがとう』、小池栄子主演『接吻』が公開され大きな話題を呼んだ。
メッセージ「要するに、やってみなければわからないし、始まらない」:抜粋したシナリオをもとにした、劇映画における芝居の組み立て(リハーサル)、芝居の切り取り(撮影)、芝居の再統合(編集)を実践する予定である。何故その芝居なのか、何故その画面なのか、何故その編集なのかは、一般論として語ることはできず、それらは人ごと、現場ごとに変化し、生み出されていく。要するに、やってみなければわからないし、始まらない。
西山洋市(映画監督)
「おろし金に白い指」「ぬるぬる燗燗」「ぬるぬる燗燗の逆襲」「ホームビデオの厳かな愉しみ」などTVドラマの演出で注目を集める。とりわけ大杉漣主演の「ホームビデオの厳かな愉しみ」はhi-8のビデオキャメラで撮影され、関西テレビの深夜枠で放映された異色作である。96年に劇場公開作『ぬるぬる燗燗』を発表。2004年には佐藤仁美主演の『稲妻ルーシー』、豊原功補主演の『運命人間』が相次いで劇場公開され話題を読んだ。黒沢清監督『蜘蛛の瞳』、塩田明彦監督『月光の囁き』では共同脚本を手がけた。
メッセージ「セリフをきっかけにして生まれる視覚的な表現の可能性を、みなさんと一緒に追求したい」:「映画における演技とは何か」についてはフィクションコースでもずっと考えられてきた。実はそのことだけが考えられているといっても過言ではない。「映画における演技」を考え、模索すると、必ず「映画とは何か」という根本的な問いに行き当たるからだ。映画と演技の関係には映画そのものの生成の秘密が隠されている。アクターズコースで俳優としての訓練を受けているみなさんが相手であるなら、この際、セリフをきっかけにして生まれる映画的な表現の可能性を、みなさんと一緒に追求したい。
特別講義担当講師
佐々木敦(批評家)
64年生。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ編集発行人。著書に『即興の解体/懐胎ー演奏と演劇のアポリア』『ニッポンの思想』『文学拡張マニュアル』『テクノイズ・マテリアリズム』『ゴダール・レッスン』など多数。早稲田大学、武蔵野美術大学非常勤講師。
メッセージ「映画の演技/演出と、演劇の演出/演技について、皆さんと一緒に考える機会になればと思っています」:映画の演技/演出と、演劇の演出/演技とは、どこがどう似ていて、どこがどう違うのか? 両者はどの次元で繋がっていて、どこから/どこまで、些かなりとも異なっているのか? この問題は、僕自身、大変興味を持つところです。教えることなど出来ませんが、皆さんと一緒に考える機会になればと思っています。


